まだ「オールロード」という言葉を聞くことが少なかった時代に、いち早くそのコンセプトを投じたINVERSIONシリーズ。成熟を経て2024年、INVERSION
X として装い新たにカムバック。
そのデビューからは5年以上の月日が経ったものの、時を経ても私たちの想いは至ってピュアなまま。
舗装路が終わったその先に広がる楽しみはロードユーザーにこそ見出して欲しいし、舗装路をスピードに乗って走る心地よさをMTBユーザーにこそ味わってほしいのだから。
オンロードとオフロードの両方で高いパフォーマンスを発揮する、そんな欲張りなバイクをつくること。
結果から言うと、その設計においては大きく奇をてらうような要素は不必要でした。低重心かつ、高速走行時の加速性/安定性にも影響を及ぼすロングホイールベース。この手のジャンルの自転車としてはスタンダードとも言える設計ではあるものの、あらゆる路面で普遍的なパフォーマンスを発揮することは間違いなかったのです。
ただし、その素材にはこだわりました。
一般的なクロモリフレームの製造工程においては、高い瞬発性を求めて硬い「熱処理された鉄管(調熱鋼)」が使用されることが多いですが、一部のフレームビルダーなどからはより柔らかく、感覚的に自由度の高いフレーム設計が可能な、熱処理がされていない「非調熱鋼」が好まれることがあります。そして、これはJOE BREEZEも例外ではなかったのです。
INVERSIONシリーズでは、一貫してこの非調熱鋼を採用。高い自由度の中で最適解を見つけることはBREEZERの得意とするところであり、それによって得られるスチール本来の「ライドフィール」と「耐久性」は、私たちにとって何物にも変え難いのです。
多くの自転車メーカーから絶大な信頼を得る、耐久性の高い4130クロモリフレーム。INVERSION Xは、その中でもあらかじめ調熱されていない「非調熱鋼」を採用することでスチール本来の振動吸収性と耐久性を最大限に生かした。 |
コンポーネントはSHIMANO GRXをセット。「走り」を犠牲にしないという基本コンセプトに則り、フロントは46/30のマイクロコンパクトギアを採用。グラベルバイクにフロントシングルが採用されて久しい昨今でも、ギアに豊富な選択肢があることは、グラベル環境下での急な勾配の変化や荷物積載時にもやはり根強く有効であり、平地の高速巡行から急な坂道まで様々な環境下での走破性を重要視。 |
この5年強ほどでギア/バイクパッキング市場は大きく進化した。より多くの荷物積載時にも快適性を失わないように、タイヤの標準サイズは過去モデルよりインチアップした40Cを採用。最大クリアランスも42Cと拡張性を増した。また、トップチューブをはじめとし、ギアを取り付けるためのアイレットも過去モデルと比較して増設されている。 |
砂利道を走り抜ける楽しさはもちろんのこと、舗装路をスピードに乗って走る心地よさも、バランスよく楽しみたい人のために。
いわば"マルチパーパスなバイク"をコンセプトにする以上、長距離走行での「快適性」と、長く付き合えるための「耐久性」を追求するのはわたしたちにとって使命ともいえるが、そこに製造上の非効率さや、マテリアルにおける探究が立ちはだかろうと厭わない。
INVERSIONは、オフロード走行を視野に入れたアドベンチャーバイクを数多くラインナップするBREEZERの中において、オンロードでの「走り」も決してトレードオフせず、長く付き合えるバイクなのです。